ステロイドは両刃の剣
ステロイドは、副腎皮質ホルモンの炎症抑制・免疫力抑制作用を応用した薬で、さまざまな疾患の治療に使われていますが、多くの副作用があります(ステロイド治療|東京女子医科大学病院 腎臓内科)。まさに、両刃の剣(りょうばのつるぎ)と言えます。
副腎皮質ホルモンはステロイドの一種 ホルモンは情報伝達物質で、体のさまざまの臓器などで作られ、血管によって標的細胞に運ばれ、指示を伝達することにより、体の働きを制御していますが、すぐ近くにある細胞に働くこともあります。ホルモンは構成材料によって次のように分類されます(内分泌の不思議 ホルモンは生命のメッセンジャー)。
副腎皮質ホルモンにもさまざまの種類 副腎は腎臓の上の方にくっついている小さな三角形の臓器です。副腎には、副腎皮質と副腎髄質があり、さらに、副腎皮質には、球状層、束状層、網状層に分かれ、それぞれの部位でさまざまのホルモンが作られています( 副腎皮質ホルモン|内分泌 | 看護roo![カンゴルー])。 副腎皮質ホルモンにもさまざまの種類があります。
テストステロンは、約95%が睾丸(精巣)の中で、残る5%が副腎で合成されて、分泌されると言われています(体のどこで作られて、どのように分泌していますか?|大東製薬工業株式会社)。 新型コロナ重症患者に対して、投与を推奨 副腎皮質ホルモンのコルチゾール(またはコルチゾン)と同じ作用をもつように合成されたものとして、コルチコステロイドがあります。体内の炎症を軽減するために使用できる最も強力な薬で、炎症が起こるあらゆる状態で有用です。多くの合成コルチコステロイドは、 コルチゾールよりも強力で、ほとんどがより長く作用します。コルチコステロイドを長期にわたり、特に高用量で、内服や静脈内注射により使用していると、全身のほぼあらゆる臓器に様々な副作用を必ず引き起こします。吸入薬や皮膚に直接つける外用薬は、コルチコステロイドの静脈内注射や経口投与に比べて、副作用は大きく減ります( コルチコステロイドの使用法と副作用 - MSDマニュアル家庭版)。 WHOは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者に対して、コルチコステロイド投与を推奨しています。ただし、非重症の患者への投与は推奨していません(WHOが重症新型コロナへのステロイドを推奨)。 成人の3分の1がステロイドレスポンダー? コルチコステロイドは、内服薬に比べ外用薬は副作用は大きく減ります。ただし、点眼薬については、敏感に反応して眼圧が上昇する場合があります。このような体質の人はステロイドレスポンダーと呼ばれています。 日本眼科医会によると、次のように、成人の3分の1がステロイドレスポンダーだそうです(ステロイド点眼での眼圧上昇に警鐘 )。これは、デキサメタゾンを使った場合の数値ですから、効き目の穏やかなフルメトロンなら、もう少し低い可能性はあります。
排水溝のフィルターが目詰まり ステロイド点眼薬の眼圧上昇に関しては、医薬品医療機器総合機構により、医療関係者向けにマニュアルが公開されています。 (独立行政法人 医薬品医療機器総合機構>重篤副作用疾患別対応マニュアル(医療関係者向け)>緑内障) 少し長くなりますが、関係部分を紹介すると、次のようになります。 興味を惹かれた部分に下線を施しました。
原因となる医薬品には、私に処方されたフルメトロン(フルオロメトロン)が含まれています。「副腎皮質ステロイド薬であれば種類や投与方法にかかわらず眼圧上昇を来しうる」ということですから、どんなステロイド点眼薬でも眼圧上昇の可能性はありそうです。 「発現機序は……今のところ統一した見解はない」ものの「眼圧上昇は前房隅角での房水流出障害が原因と考えられている」「線維柱帯での流出抵抗が増大することで眼圧が上昇すると考えられる」ということですから、原因は特定できないが、排水溝のフィルターが目詰まりして、房水があふれ気味になっていることに間違いはなさそうです。線維柱帯と房水の関係は次のイラストのようになっています(原発開放隅角緑内障 | 新宿駅東口徒歩1分の眼科|新宿東口眼科医院 )。 眼圧上昇は、点眼薬によるものが多いそうですが、塗り薬の場合も「顔面や眼瞼、さらには遠隔部の皮膚への軟膏など外用薬の投与でも、眼圧を上昇させるのに十分な量が吸収され眼組織に到達し、眼圧上昇を来すことが知られ」「アトピー性皮膚炎患者への副腎皮質ステロイド外用薬使用の際には眼圧上昇の発現に注意する必要がある」ということですから、アトピー性皮膚炎の子供にステロイド軟膏を使う場合は、皮膚科医や親は眼圧上昇に細心の注意を払う必要があります。 子どもではほとんど全例で眼圧が上昇 次のように、「ステロイドの投与量と投与期間によっては、すべての人に眼圧上昇の可能性がある」との指摘があります( 副腎皮質ステロイド薬の眼局所副作用/日野病院名誉病院長 玉井嗣彦、興味を惹かれた部分に下線を施しました)。 子どもはステロイドの影響を受けやすく、点眼だけでなく吸入薬やローションによっても眼圧上昇は起こるということですから、アトピー性皮膚炎や小児喘息で、ステロイドを使用する場合は、眼圧に注意する必要がありそうです。
ステロイドは予防薬? NPO団体、医薬品情報研究会「ファーマフレンド」が運営している「おくすり110番」(「おくすり110番マニュアル」(AAJ編) おくすり110番徹底解剖参照)では、フルメトロンを次のように紹介しています( おくすり110番 フルオロメトロン:フルメトロン、一部抜粋)。 私が、術後に点眼するため処方されたのは、0.1%のフルメトロンでしたから、低濃度とは言えないようです。1日4回点眼で期間は指定されていませんでした。 どこの眼科でも、白内障手術後の炎症に備えて、ステロイド点眼薬が処方されるようです。 「ふつう、症状の強いときや視力障害のおそれのあるような重症例に用います」ということですから、炎症も出ていないのに、いわば予防的に処方することには、少し違和感を覚えます。
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