分厚いメガネから解放
手術では、にごった水晶体を吸い出し、眼内レンズ(取っ手の付いたコンタクトレンズのようなもの)を入れます。手術は5〜10分ほどで終わります。麻酔薬を点眼するので、痛みはほとんどありません。手術中は、強い光を当てるので、視界はほぼ真っ白になります。 角膜に小さな切れ目を入れますが、血管はないので血は出ません。角膜上皮の細胞の増殖スピードが皮膚よりもずっと早いので、傷口を縫合しなくても、自然に修復します。手術が終わったら帰宅できます。1週間前後経ってからもう片眼も手術して完了です。 手術後、予想通りに後発白内障が発症しました(3年で2割が後発白内障)。 2023年3月15日に左目の後発白内障手術を受け、2024年10月17日に右目の後発白内障手術を受けました。点眼液で瞳孔を開いて、麻酔を点眼し処理用コンタクトを装着し、YAGレーザーで、濁った後嚢部分を取り除く手術です。痛みもなく数分であっけなく終了します。 白内障手術前のデータは次のとおりです。
多くの眼内レンズは、6D(ディオプター)から30Dまで、0.5D刻み製造されています。数値が大きくなるほど屈折率が大きくなります。 レンズの度数により、術後の見え方は老眼か近視かを選ぶことになります。単焦点レンズでは、水晶体のように厚みを調節できないので、遠くから近くまで見えるようにはできません。 私は、近くが見えた方が良いので、目標屈折度-2.5D=40cmでレンズを選びました。40cmというのは、焦点距離(ピントが合う距離)が40cmという意味です。D(ディオプター)は、近視やレンズの度数を示す単位で、「1m÷焦点距離」で算出されます。両者の関係をイラストにすると次のようになります(近視度数とは?数字の見方や確認方法について)。 近視は、眼軸の長さが通常よりも伸びた結果、遠くに焦点を合わせられなくなる事により生じます。水晶体を目いっぱい薄くしても40cmまでしかピントを合わせられない場合は、-2.5Dの近視ということになります。 ただし、レンズには、被写界深度や焦点深度というものがあります。 次のイラスト(知っておきたい撮影レンズの基礎 〜レンズ選定編〜 | 東芝テリー株式会社)の被写体までの距離が40cmだとして、レンズの焦点距離が40cmとするならば、赤線のようにピッタリと像が結ばれます。被写体がそれよりも遠ければ、緑線のように手前にピントが合うため、像は少しぼやけます。被写体がそれよりも近ければ、青線のように後ろにピントが合うため、やはり像は少しぼやけます。 しかし、ぼやけ具合が一定の許容範囲内であれば、ピントが合って見えます。この許容範囲が被写界深度と呼ばれるものです。 この関係を、より詳しく見ると次のイラスト(焦点深度、被写界深度、絞りとの関係)のようになります。水晶体を通して見た場合のピントが合う距離は、遠点距離(物体距離+後方被写界深度)ということになります。なお、物体距離が長いほど被写界深度は深く(長く)なり、後方被写界深度の方が前方被写界深度より深くなります。また、絞った(レンズの縦の長さを短くした)方が被写界深度は深くなります。昼間の屋外で瞳孔が小さくなった場合や、目を細めた場合に遠くが見やすくなるのはこの効果によるものです。 したがって、目標屈折度-2.5D=40cmで眼内レンズを選んだ場合、後方被写界深度を加味すると、より遠くまでピントが合って見えるため、-2.5Dよりも軽い近視ということになります。 眼内レンズの被写界深度については、次のようなイラスト(多焦点眼内レンズ)があります(なお、眼内レンズは0.5D刻みで度数を自由に選べます。近方、遠方、中間距離用のレンズといったものが特にある訳ではありません。また、より遠くを見るように設定した方がピントの合う範囲はより広くなります)。 このイラストによると、焦点距離40cmに設定した眼内レンズでピントの合う範囲は、被写界深度を含めると、30cm〜50cmということになります。しかし、実際にレンズを入れてみると、私の場合は、20cm近くから60cm近くまでピントが合っています。 遠点距離60cmということは、-1.7D程度の軽い近視ということになります。実際に測ってみると、両眼で、0.3〜0.4程度の視力が出ていますから、裸眼でも日常生活には問題はありません(視力は0.3〜0.4あれば問題ない!? 述べ10万人の視力や見え方を検査してきた認定眼鏡士が綴る“見えること”の本質)。近くは、針に糸を通せるぐらい、よく見えていますから、老眼鏡は全く必要ありません。 ディオプターと視力のおおよその関係は次のようになっています(視力と処方箋の読み方)。眼内レンズの焦点距離を40cmに設定した場合、遠点距離が60cmまで伸びるとするならば、0.3〜0.4の視力が出ることになります。50cmに設定した場合、遠点距離が70cmまで伸びるとするならば、0.4〜0.5の視力が出ることになります。眼内レンズを近方に合わせたとしても、人によっては遠くも結構見えるようになるといえそうです。 眼内レンズの見え方のイメージ写真(多焦点眼内レンズ)では、 単焦点レンズで近くに焦点を合わせた場合は、一番左のように遠くがぼやけています。 私の場合は、0.3〜0.4程度の視力が出ていますから、一番右のような見え方となっています。駅名のような大きな文字は余裕で読めます。 以上のように、白内障になったことにより、強度近視用の分厚いメガネから解放されました。マスクをしてもレンズが曇ることなく、耳掛け式のイヤホンも使え快適です。まさに、「人間万事 塞翁が馬」といえそうです。 |