手術までの経緯
手術前の眼のデータは次のとおりです。
変化は5年ほど前から 視力の変化を、大雑把に時系列にまとめると次のようになります。
2019年頃から、白内障が急激に進んだようで、街路灯が二重に見え始め、読書用のメガネではパソコン作業が難しくなり使わなくなりました。 2019年12月、免許更新では、1.0が見えるように作ったメガネで視力検査ぎりぎりクリアできたので、両眼で0.7が見えてなかったと思います。それでも、街路灯が二重に見えるのは乱視が進んだためと思い、2020年9月になって、メガネレンズの交換に行ったところ、視力が極端に落ちていて、0.7まで矯正できるレンズがないと告げられ、ようやく異変に気付きました。 インターネットで検索すると、単眼複視(片眼でものがダブって見える)が白内障の特徴であり、強度の近視の場合は、手術をして眼内レンズを入れれば大幅に視力が回復することが分かったので、手術することを決めました。 しかし、新型コロナ患者が増え始めたこともあって、少し様子を見てました。 その後、2020年の暮れ頃から、急速に視力が落ち始め、1.0が見えるはずのメガネでも、20センチ先のパソコン画面がようやく識別できるほどになってしまいました。3月10日に左目、3月17日に右目の手術を行いました。焦点距離40センチに指定して単焦点レンズを入れましたが、日常生活ではメガネなしで過ごせるようになりました。裸眼で針に糸を通せますし、買い物や交通機関の利用もメガネなしで、全く不自由は感じません。 核白内障に特有の症状 白内障は、水晶体の濁る部位によって、皮質白内障、核白内障、後嚢下(こうのうか)白内障などに区別されます( 白内障にはどんな種類があるの?、このページのリンクは切れています)。 ウェブ情報(佐々木洋先生に聞くなど)を参考に、それぞれの特徴をまとめると次のようになります。
皮質白内障は、最も多いタイプで、進行がゆっくりで、明るい場所でまぶしく感じる、などが特徴です。水晶体が白くにごるという文字通りの白内障です。 皮質白内障は、次のように進行します(白内障の自覚症状 - 東京逓信病院)。真ん中付近の鮮明な白い輪は撮影のときに光源が反射したものと思われます。 水晶体の表面が周りから、花びらのように濁り始めます。これらの写真は薬で黒目(瞳孔)を開いて撮影したもので、通常の黒目はもっと小さくなっています。実際にものを見るのは黒目の中央部分なので、皮質白内障は、ある程度進行しないと見え方には影響しません。 核白内障は、「視力が極端に落ちる」「薄暗い所では見えにくい 」「ものが二重に見える」などの症状が認められます。私に現れた症状の多くは核白内障に特有のものです。核白内障では水晶体は黄色から茶色ににごります。実際、手術をしてみると、黄色がかった景色が、青白く鮮やかに変化したのには驚きました。 核白内障は、次の写真のように進行します(加齢と眼疾患 - 獨協医科大学リポジトリ )。核白内障は水晶体の内部で起こるので、特殊な方法で撮影しています。 具体的には、次のように目に細長い光を当て、斜めから眼の内部を観察します(白内障の検査 - 東京逓信病院)。 核白内障は、眼の中心部から周辺部へにごりが広がりますから、早い段階から見え方に影響が出ます。 後嚢(のう)下白内障は、水晶体の中央奥から濁り始めます。急速に視力が低下するのが特徴です。この白内障特有の原因として、抗炎症薬として広く使われているステロイドの副作用として発症するといわれています(副腎皮質ステロイド薬の眼局所副作用)。また、放射線被曝によっても発症するそうです(放射線白内障(水晶体混濁))。 レトロドット(retrodots)とウォータークレフト(waterclefts)については、ネット上ではほとんど情報が見つかりませんでした。 retrodotsでは近視化、watercleftsでは遠視化を生じることがあるそうです(白内障|電子コンテンツ|日本医事新報社 )。 水晶体は生涯成長し続ける 水晶体の水平断面は次のような構造をしています( 日本白内障学会>水晶体の構造と再生)。水晶体は水晶体嚢につつまれた楕円球体をしていますが、その内部には、びっしりと透明の細胞が詰まっています。中央に核があり、その周りを皮質が包んでいます。水晶体嚢の前面内側に薄い上皮細胞があり、端のほうから増殖し、細長い繊維細胞に形を変え、年輪のように広がります。やがて、繊維細胞は核などの内部組織が分解して透明になります。上皮細胞の増殖は一定の年齢になったら終了するということはないので、水晶体は生涯成長し続けることになります。 水晶体核については、「皮質は柔らかい組織ですが、加齢とともに増加してくるため水晶体の中央に集積され、50才頃から核と呼ばれる硬い組織が形成されるようになります」という説明があります(航空医学研究センター>眼の成人病−白内障)。核も皮質も同じ繊維細胞でできているが密度が異なるということでしょうか。成人核は、中年を過ぎてから形成されるようですが、それが老眼と関係しているのでしょうか。 水晶体の構造をより詳しく見ると、次のイラスト( 白内障 (09-02-05-04) - ATOMICA -)のようになります。 水晶体の線維細胞を顕微鏡で見ると次のようになっています(水晶体の構造、このページのリンクは切れています)。 水晶体の繊維細胞は、六角形の細長い柱のような形状になっているようです( 眼球eyeball、このページのリンクは切れています)。 水晶体の構造を立体的に見ると次のようになっています(目の構造│長崎市中村眼科)。上皮細胞は、水晶体前面の表面を薄く覆っています。上皮細胞は、赤道部付近で増殖し、分裂した細胞は前後に細長く伸び繊維細胞となり、内部組織が分解して透明になります。水晶体を前から見ると、繊維細胞は中心から周辺へ放射状に伸びています。皮質白内障で、水晶体の表面が周りから、花びらのように濁り始めるのは、このような組織形成の過程で何らかの異変が生じるからなのでしょうか。 透明にできないから、白内障となる? 近年、水晶体の繊維細胞が透明になる仕組みが明らかとなりました( 共同発表:眼の水晶体が透明になる仕組みの解明〜新たな細胞内分解システムの発見〜)。 細胞内の浄化・リサイクルシステムとしてはオートファジーが知られていますが(オートファジーが始まる仕組みが構造から見えてきた)、PLAATファミリー酵素は、それとは別に細胞小器官をすべて分解して、水晶体の繊維細胞をたんぱく質と水だけで構成される組織に変えて透明化します。 Plaat3酵素の欠損したマウスは、白内障の症状を示しています。透明な細胞が濁るのではなく、細胞を透明にできないから、白内障となるようです。 核白内障と紫外線は、強い相関関係 これまで、皮質白内障と紫外線被曝との関連性が指摘されてきましたが、核白内障についても紫外線の影響が注目されるようになっています。赤道直下のタンザニアでは、60歳代の実に9割が白内障を発症しています( 紫外線被曝による眼への影響と対策のポイント)。それに比べ、石川県門前町では極端に比率が低くなっています。 オーストラリアでの調査によれば、20〜29歳の間に太陽光をいつも浴びていた人は、被曝していない人に比べて核白内障のリスクが5.9倍と顕著に高くなるそうです。 皮質白内障と紫外線被曝との関連については、次のようになっています(環境因子(紫外線)と白内障)。「疫学研究では,眼部 UV-B 被曝量と皮質白内障(cortical cataract:COR)に有意な関連を認めた調査が多く,慢性の UV-B 被曝は COR のリスクになると考えてよい」ということですが、UV 強度の異なる地域住民を対象としたこの調査では、アイスランドを除いては、紫外線の量が増えても、皮質白内障患者数はさほど増えていません。 一方、この調査では、核白内障と紫外線被曝とは、次のように強い相関関係を示しています。 この点について、この論文の著者は次のように述べています。
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